アップルの教科書アプリ、普及の見通しは?

(CNN) 「教育は当社のDNAに深く刻まれている」――米アップルのフィル・シラー上級副社長は、多機能携帯端末「iPadアイパッド)」で教科書が読める電子書籍アプリ「iBook2」を発表したイベントの冒頭でこう語った。電子教科書が教育現場を塗り替える日は、果たして近付いているのだろうか。

アップルは米教育出版大手数社と提携して電子教科書の分野に乗り出した。イベントでは見た目に美しく、著者からのビデオメッセージや3Dアニメ、フォトギャラリーを盛り込んだ教科書が披露された。重要な部分に印をつけたり、自分なりの参考書を作ったりする作業も自由自在だ。

アップルは同時に、教科書作成アプリの「iBooks Author」、教員向けアプリの「iTunes U」も発表した。イベントではもちろん現場の教員からの声も紹介されたが、主役はやはり電子書籍の内容だった。見てみたい、読みたい、使ってみたいと思わせる仕掛けは、まさに教科書のあるべき姿を示している。
日常生活でハイテク機器を使いこなす生徒たちが、電子教科書に飛びつくことは確実だろう。だが電子化の決断をするのは、生徒でなく学校側だ。そこにアップルの壁がある。

教育予算は厳しく、iPadは決して安くない。一斉に切り替えた場合、それに対応できる技術スタッフや設備を学校が備えているとも限らない。アップルはアプリを無料で提供し、教科書の価格も15ドル以下に抑えている。しかしこれは同社にとっても出版社にとっても慈善事業ではなく、利益をあげる必要がある。

確かに壁は高いが、ここで注目すべきは父母の考え方かもしれない。自分のためにiPadを買うのはぜいたくだと思っていた親も、子どものためなら何とか買ってやりたいと思うのではないか。わが子が最先端の方式で数学や科学を勉強できて、現代社会の競争を勝ち抜くのに必要なハイテク技能を身につけられるとなれば、出費をいとわないという親は多いだろう。電子書籍を取り入れるべきかどうかを議論するより、どの家の子も等しく電子書籍を使えるようにするにはどうしたらいいかを考える時なのかもしれない。