「見つめる」金正日氏―写真を集めたブログが大人気

グーグルの検索窓で「Kim Jong Il(金正日)」と入力すると、次の3つの検索候補が出てくる。「dead(死亡)」「died(死去)」、そして「looking at things(何かを見つめる)」だ。最後の候補は北朝鮮金正日総書記の名前を冠したブログで、金正日氏が「何かを見つめている」公式の写真を集めて掲載している。

 このウェブサイト「Kim Jong-Il Looking At Things(見つめる金正日氏)」の制作者は、米国のボストン・グローブ紙に掲載された「親愛なる指導者」の写真に触発されて、サイトを立ち上げた。

 制作に当たったのは、リスボンの広告代理店Y&Rのアートディレクター、ジョアン・ロチャ氏だ。同氏は言う。 「新聞に掲載されていたのは、このブログの短いバージョンのようなものだった。どの写真でも、金正日氏が同じ帽子、同じサングラス、同じコートを身につけて、ものを見ている。写真では、少々もうろくしているように見えて、これが北朝鮮プロパガンダとして通用しているとは、信じられなかった。だから、このブログを立ち上げた」

 このサイトには、金氏が側近に囲まれながら、さまざまな当たり前のもの――トウモロコシやピンクのセーターなど――を視察している写真が掲載されている。ロチャ氏によると、同サイトの閲覧回数は通常は月間50万回ほどだが、19日にはポルトガル時間の午前11時までに30万回にまでなった。

 ロチャ氏はこのブログに写真を載せ続けるべきかどうか迷っているが、続ける方に傾いているという。まだ使っていない写真が375枚あるのだ。ブログの「このサイトについて」のセクションで、同氏は「なぜ、こんなにおかしいのか? 自分でも分からない」と書いている。

 だが、さらに聞くとロチャ氏は、「これらの写真は北朝鮮について多くのことを語り、どれだけ彼らの世界観がゆがんでいるかを示している。プロパガンダは普通、人物を実物より立派に見せるものだが、この場合は正反対で、金氏が一般の人々と触れ合っているように見せている。人間の中の神を演出したかったのではないか」と話した。

 北朝鮮の新たなリーダー、金正恩氏に関しても、すでに類似のサイトが出てきている。ロチャ氏は、金正日氏のサイトほどうまくはいかないと思うが、幸運を祈ると話す。「常に悪者として描かれる人物が、何かを見つめるという無害なことをしている姿を見るのが面白い。金正恩氏にはそれほどの無慈悲さはない」