続々サービス開始するLTE、真の実力を発揮できない理由とは?

 「EMOBILE LTE」がサービスを開始し、日本通信もMNVOとしてLTEサービスの提供を開始するなど、国内でも高速通信を実現するLTEのサービス提供が本格化しつつある。だがその裏には、LTEの真の実力を発揮できないという悩みも見え隠れする。

イー・モバイルLTEサービスを開始

 前回、韓国でLTEサービスが本格化してきていることについて触れたが、日本でも次々とLTEサービスがスタートしており、本格化の兆しを見せてきている。

 まずは、すでにLTEサービス「EMOBILE LTE」の提供を発表しているイー・アクセスイー・モバイル)である。発表当初は提供開始日や料金などの詳細について発表されなかったが、2月29日にはその詳細を発表。3月15日にはサービス提供を開始している。

 EMOBILE LTEを利用するには、基本使用料とデータ通信タイプ「フラット」の定額料を併せた「LTEフラット」の料金を毎月支払う必要がある。この料金を見ると、「ベーシック」での契約で5060円だが、2年間の継続利用が必要な「にねん」では3880円と設定されている。他社の高速通信サービスと比べても、価格競争力のある内容に設定されたといえよう。

 さらに、最大25カ月間割引が受けられる「月額割」を適用することで、端末が実質0円で購入できるなど、端末の割引施策も強化。既存のイー・モバイル契約者に対しても、5月31日までに特定の契約種別でEMOBILE LTEに契約変更すると適用される「EMOBILE LTEスタートキャンペーン」なども展開している。

 こうした戦略的な料金施策に加え、NTTドコモLTEサービス「Xi」のように、データ通信量が一定数に達した場合は速度を大幅に落とすといった制限を、2014年までは加えないとしたことが好感をもたれているようで、EMOBILE LTEの契約は好調に推移している。今後はMVNOからもイー・モバイル回線を利用したLTEによるデータ通信サービスが登場すると発表されており、イー・モバイルLTEへの移行を急加速するものと考えられる。

日本通信MVNOLTEサービスを開始

 MVNOによる通信サービスに力を入れる日本通信も3月27日、新たにLTEを用いたサービス「カメレオンSIM」の提供を発表した。3月31日から発売するとしている。こちらはNTTドコモのXiの回線を用いたサービスで、基本的にはSIMカードのみでの提供となる。

 大きな特徴はその契約形態にある。当初は5800円のパッケージを購入し、LTEと3Gを併せたデータ通信サービスを21日間(利用可能なデータ量は3GBまで)利用できるが、その後はWebサイトから、3種類のオートチャージ料金を毎月自由に選択・変更できるのだ。

 具体的には、LTEによる高速通信が5GBまで定額で利用できる「高速定額」、通信速度が300kbpsに制限されるが料金が抑えられる「U300定額」、1GBまでの従量制となる「1GBフェア」の3種類。それぞれ利用可能な料金や日数が異なっており、状況に応じてユーザーが自由に変更できることから、「カメレオン」という名称が付けられたようだ。日本通信は従来、サービス毎に異なるSIMを提供しており、別のサービスを利用したい場合はSIMを買い直す必要があった。だがカメレオンSIMであればそうした手間も不要になることから、より扱いやすくなる。

 日本通信ではこのサービス提供と同時に、LTE対応のモバイルWi-Fiルーター「b-mobile4G WiFi2」の提供も開始。MVNOということもあり、NTTドコモの回線普及状況に左右される部分はあるだろうが、日本通信も今後、LTEによるデータ通信に力を入れていくと考えられる。

LTEが実力を発揮できない理由は?

 NTTドコモイー・モバイルやそれらのMVNOに続き、4月2日にはソフトバンクモバイルが、2012年秋以降にLTEサービスを提供すると発表。既に開始しているAXGP方式によるサービスも含め、次世代高速通信対応スマートフォンには月額5985円(7GB超過後は2GB毎に2625円料金かかる)のパケット定額サービスを提供するとしている。既に今年末にLTEサービスの開始を予定しているKDDIも含め、各社のLTEに対する取り組みが急加速することは間違いないだろう。

 だが、各社のLTEサービスを見るてみると、課題もいくつか見えてくる。特に大きな課題といえるのが“通信速度”だ。Xiは現在、一部屋内を除きほとんどのエリアで通信速度が37.5Mbpsとなっている上、EMOBILE LTEも下り75Mbpsを実現できているのは、現在のところ、東京及び地方都市の、しかもごく一部という状況。LTEサービスが真の実力を発揮するには至っていないのが現状だ。

 なぜ、実力を発揮できないのかというと、各キャリアが高速通信に必要な周波数帯域幅の確保に苦慮しているためだ。LTEで下り75Mbpsを実現するには10MHz×2の帯域幅が必要だが、NTTドコモが現在Xi向けに使用しているのは、一部屋内を除き2GHz帯の5MHz×2幅のみ。またEMOBILE LTEも、ほとんどのエリアで1.7GHz帯の5MHz×2幅しか使用していないと見られる。

 その理由は、各キャリアともLTEと同じ帯域で、すでに3Gのサービスを提供しているためだ。3Gサービスの利用者が圧倒的に多い現状では、3G向けにフル活用している帯域をLTE向けに割くのが難しいのである。ちなみにNTTドコモは、LTEなどの高速通信用として、1.5GHz帯を15MHz×2幅分所有しているが、これは2014年3月末まで東名阪で使用できる帯域が一部に制限されているため、本格活用が難しい。

 各社がLTEの販売促進に力を入れているのも、LTEに移行してもらうことで3Gの利用者を減らし、現在3Gで使用している帯域をLTEに割り当てたいという思惑があると考えられる。ゆえに、LTEで真に高速通信が体験できるようになるのは各キャリアがより多くの帯域幅を確保できるようになる、もう少し先のことになるといえそうだ。