フェイスブック、写真共有アプリのインスタグラムを10億ドルで買収

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手の米フェイスブックは9日、多機能携帯電話向け写真共有アプリを開発したインスタグラムを現金と株式およそ10億ドル(約816億円)で買収すると発表した。フェイスブックの企業買収としてはこれまでで最大となる。

 約100億ドルを調達する新規株式公開を進行中のフェイスブックはこれまで大きな企業買収は手控えてきた。カリフォルニア州のメンローパークに本拠を構える同社は、これまで創業間もない企業を数千万ドル程度で買収してきたが、大半はその技術ではなくその企業にいる人材の取り込みが目的だった。

 インスタグラムのアプリは、写真を楽しく奇抜な形で友人と共有出来ることを売り物にしている。アップルの「iPhone(アイフォーン)」で撮った写真を、フィルターを選んで好みの色調に加工したりすることができる。発売当初は、昔の写真のように渋く仕上げられるアプリとして人気が出た。

 また、このアプリでは写真の共有者が「いいね」をクリックしたり、コメントも記入できる。このため、やはり写真の共有にも多用されている「ツイッター」の写真版と評す向きも一部には出ていた。

 インスタグラムは2010年の秋にスタンフォード大学の卒業生2人が創業したばかりで、現在は社員がまだ十数人。今回の買収で大金が転がり込むことになる。この写真ソフトウエアは、無料で最近まではアイフォーンでのみ提供されていた。

 インスタグラムは多機能携帯電話をより有効に活用するために知恵を競った新商品を開発する数多くの創業間もない企業の1つだが、その中でも驚くべき急成長を遂げた。

 3月初旬にテキサス州オースチンで開催されたアプリ業界の会合では、同社を創業した最高経営責任者(CEO)のケビン・シストローム氏が基調講演し、この写真共有アプリの使用登録者数が昨年12月からの3カ月間で1500万人から2700万人へとほぼ倍増したことを明らかにした。

 また、先週にはグーグルのスマートフォン(多機能携帯電話)向け基本ソフト(OS)、アンドロイドに対応したバージョンを発売、爆発的に利用者を増やした。インスタグラムは利用者が合計3000万人を超えたとしている。

 フェイスブックマーク・ザッカーバーグCEOは同日、声明を出して同社はインスタグラムの一部事業を社内に取り込むものの、他の部門はインスタグラムが独立した企業として展開していくことを望んでいることを明らかにした。

 今回の買収手続きはこの4‐7月期の後半に完了する見込みだ。